aoi iro no tori

だんだん離れてゆくよ アルペジオのように トリルでさようなら 別れを惜しむように ──日常のおはなし──

食と時代と土地


 祖母がメシマズだったわけではないです(私がメシマズの可能性もあるのか)。
 私にとっては生涯分かり合えない人物だったけど、子供の頃は夏休みに遊びに行くと氷菓を用意してくれていたり気遣ってくれていたと今ならわかる。私自身の障害もあってあまり人に懐く子供ではなかったから祖母もどう接して良いのか分からなかったんだろうな。
 私はしょっぱいものが好きなんですけど祖母は大の甘党だったのでそこら辺の味の好みの違いもあったのでしょう。
 あとおばあちゃんが手に持っているクッキー缶ってなんであんなに夢の塊みたいに見えるんでしょうね(中身は大体薬とか領収書で夢が打ち砕かれる)。



*いにしえより伝わるエディブルフラワー

 前に小山愛子先生が漫画「舞妓さんちのまかないさん」のおまけページにて「食用の菊の花って関東のスーパーではあまり見かけない気がする」というようなことを書いていらしたのを(記憶曖昧です)スーパーに食用菊が売っていたのを見かけて思い出しました。
 うちも母方が宮城なので祖母がよく菊のおひたしを出してくれました。
 でも味付けが苦手だったんだよな、と思ったので勇気を出して買ってみました、もってのほか(そういう名前の菊です)。
 軽く水洗いをしてガクを取って、お鍋にお湯を沸かして沸騰したら大さじ一杯の酢を入れて花びらを押さえつけながら何十秒かお湯に浸して、しなしなになったらすぐにザルにあける。
 水分を含んだ菊をぎゅぎゅぎゅっと絞って、出汁と醤油とお砂糖(私はてんさい糖にしてみました)を溶いたところへ入れて馴染ませて出来上がり。
 簡単でしたし、食感がシャキシャキしていて美味しかった。古くからあるエディブルフラワーみたいだな。
 記憶の上書き成功です。
 ちなみに私が作った量は菊が100gくらいで出汁は水が70ccくらいで水に溶いた顆粒だしは4gくらい、醤油はおおさじ一杯、てんさい糖は目分量だけどちょびっとです。
 食感がとにかくいい。関東以西には食用菊って売っているのだろうか。


 関東というと最近はおでんにすじを入れるのが好きです。これも食感がコリコリしていて美味しい。おでんに牛すじは関西のイメージですが関東のすじは魚すじという練り物です。サメの軟骨なども入っている。見かけたらぜひおでんに入れて食べてみてくれよな。


 少し前に杉浦日向子先生の大江戸美味草紙(おおえどむまそうし)という本を読んだけどお正月に白米を食べるのは粋じゃないんだな。それでも江戸っ子ではないことを大義名分にして食べてしまうけど。
 今年も松前漬けをお正月用に購入しました。
 数の子に関する川柳が大江戸美味草紙にも載っていたけど数の子って本当にご飯のお供だよね。昔の人もお正月に白米が食べたくて我慢していたんだな、ということにしておく。


 泰三子先生のだんドーンに登場した江戸煩い(脚気のこと)が杉浦日向子先生の本にも載っていて江戸時代というところでの繋がりを感じました。
 全然違う世界みたいな感じがするけど同じ時代の出来事なんだなと、たぶんなんですけど違う著者同士の全く関係ない作品を読んで初めて思いました。世界と世界が通じ合ったみたいな。
 繋がりが食にまつわるエピソード、というところがなんとも私っぽい。