aoi iro no tori

だんだん離れてゆくよ アルペジオのように トリルでさようなら 別れを惜しむように ──日常のおはなし──

三十代からの習い事


 その三十代も今年で終わりだ。悔いなく過ごそう。きっとあっという間に過ぎ去る。



*糸を集めるのが趣味になりました

 ブルーピリオドを読んでなぜ私は染織を学ぼうと思ったか? を思い出したので書きます。長いです。暇つぶしにどうぞ。

  今はあまり絵をかかなくなってしまったけど織りという伝統工芸の一つを勉強しています。今も美術と関係のあることを学んでいるのは振り返ってみると不思議です。

 母が美術が好き、と書きましたが元々母が学生時代にやりたかったことが染織で、大学で学びたいと言ったらしいのですが両親(私にとって祖父母)から反対されて別の道を選びました。
 その何十年後かに私が生まれるのですが、母のそういう過去を見合いで結婚した父が知っていたのかわからないけど私が生まれたときに悩み抜いて「これしかないと思った」と染織に関する名前を私につけました。私は覚えてもらいにくく若干キラついた自分の名前が好きではなくてずっといやな名前だと思い続けてきました。
 糸と最初に触れ合ったのは小学校低学年時のリリアン。でも全然できなくて(不器用だから)父方の祖母がやってくれました。それを眺めるのが楽しい、みたいな、それがファーストインパクトです。
 そこからだいぶ時が流れて、三十代前半の頃だったかな? メンタルクリニックのデイケアで工芸の日があって「参加してみよう」と、工芸なんてさほど興味なかったしよくわからなかったんですけど参加しまして。
 確かストラップを作ろうという日で、ミサンガのように糸を編んでストラップを作る、というイベントの日でした。
 皆様ご存知、私は元々手先が超絶不器用ということもあって上手く作れないわけです。
 それでも勇気を出して「先生、これどうしたら直りますか?(良くなりますか?)」と訊いたら、間違えてからけっこう進んでしまっていたし、先生も私を傷つけたくないと思ったのだと思います。
「それもいいと思う!」
 と先生が言ってくれました。
 なんとなく頭がはっきりせずに帰宅して「こういうことがあって」という話をしていくうちに「私は受け入れてもらうんじゃなくて正解が知りたかった!」と悔し泣きをしました。
 そこで本を読み漁ってミサンガやストラップを作りまくるという沼にいったん落ちました。
 生まれて三度目くらいに作ったストラップを父は死去するまでずっと携帯につけていてくれましたねぇ。
 ストラップを作っていたのが二千何年だったのか忘れてしまったのですが、最初に織物っていいなと思ったのが確か美の壺で南部裂き織りを特集していた回をみたときです。
 織り機は買えないから……と、織りボードみたいなものを自作してひたすらコースターのようなものを我流で作っていました。それを四作か五作作ってみて、仲良くしていただいているかたも織り機で素敵なものを作っていらっしゃるのを拝見して「私も織り機ほしい」ってなって今も使っている織り機の購入に至りました。
 織りボード自体はがんばれば作れますが市販のものも売っています。それほどお高くもない……と思うし、丈夫です。私は段ボールで作っていました。
 織り機で自分で平織りだけ織れるようになって、でも習わないと乗り越えられない壁が高すぎて、工房で習うようになっていくつかの織り方も教わりました。今も勉強の日々です。

 母が染織好きで、父が染織に関係する名前をつけて、でも父が存命の頃にはほぼ糸に触らない人生だったのに父の死後に染織に興味を持って今それを学んでいる……というのは縁は異なもの味なもの、みたいだなぁと思っています。
 デッサンを学んでいたことも(少ししか学べなかったが)無駄にはなっていないし、ヘンプを編んでいたのも先生からすると余計な手癖が入ったかもしれないけど、私としては取っ掛かりになったので無駄ではなかった。
 無駄なことってあんまりないのかもね?? 私の文章は無駄だらけだが。



*余談

 十代の頃にデッサンを習っていたときは人と関わりがほぼなく、緊張しすぎて質問なんてできなかったし、しようとも思わなかったけど今は先生も優しく(病気のことも知っている)、間違ったことでもどんどん質問しています。人間成長するものだなーと思う。
 先生もだんだんに私の扱い方が分かってきて「うん、ちょっと違うね。それはこうで」とやんわり正しいやり方を教えてくれます。今年で三年生。もう少し成長したい。

 私は昔から学校の先生運は良くなかったのですが、カルチャースクール(この言い方いやなのだけど)の先生運は良いほうだと思う。

 デッサンの先生は絵の具も一から作る、というかたでしたが、今の織りの先生も織りに関するものはなんでも集めたくて収集されているかたです。道を極めし人はとことん変態になるものだなとなっています(尊敬しています)。
 工房の生徒さん皆様優しいし大ベテランなので上手すぎて見ても悔しさすら感じないです。自分の下手さだけは見て取れる。
 でも拝見して学ぶところは多いし教えてもらったりもしています。

 織りも学んでいますが手染めやほかの織りも勉強させてもらえるよう日夜勉強の日々……のつもりです。
 ブルーピリオドの八虎くんほどは頑張れていない……。