aoi iro no tori

だんだん離れてゆくよ アルペジオのように トリルでさようなら 別れを惜しむように ──日常のおはなし──

今日読んだ本(11/05)


 熱く語っていたら長くなってしまいました。
 お手透きの際にお読みいただけたら幸いです。
 民話好きだったら何度でも楽しめるであろう本です。

*今日読んだ本

ひどい民話を語る会
京極夏彦・村上健司・多田克己・黒史郎
出版社:KADOKAWA

 赤松啓介の下世話系民俗話に慣れてしまっていると艶笑譚は入っていない、という点で少しがっかりしてしまいましたが、別のシモの話がひどくて面白かったです。
 長年疑問だった「なぜおばあさんは川で洗濯を、おじいさんが柴刈りへ行くのか」かが分かったというかその前段階があったことも知ることができ、そこだけでも読み応えがありました。全く予想だにしない展開だったのでぜひ本のなかで答えを読んでください。
 取り上げられている民話でも特にひどいなと思ったし、オチが秀逸だなと思ったのが柿男の亜種の林檎の怪という話が個人的盛り上がり度が高かったです。
 昔はテレビもゲームもなかったからおじいさんやおばあさん、父母から語られる話がエンターテイメントだった、というのは少し理解できる世代にいましたね。
 テレビはあったけどなにを話しているのかとか理解はできなくて母にひたすら昔話や本を読んでもらうのをねだっていた時期がありました。3、4歳くらいまで。文字が読めるようになっても図書館で本を借りてきて読んでもらっていました。
 好きだったのは昔話とかもそうだったんですけど、父母が子供の頃に流行った遊びとかおやつの本を図書館で借りてきて「どうやって遊んでたの?」とか「美味しかった?」って聞きながら話を広げるのが好きでした。
 昔話は今でも通ずるところがあって少し怖いんですけど、カチカチ山とか好きでした。父はおじいさんに感情移入してしまって可哀想だから、と言って読んでくれなかったんですけど。
 今読んだらおばあさんを婆汁にしておじいさんが食べてしまう、というのは昔話にしても猟奇的だなとうっすら背筋が寒くなるんですが、子供の頃はおばあさんもおじいさんも眼中になくてうさぎとたぬきが舟を作るシーンが好きでした。ただそこだけ読みたかったと言っても良いくらい。
 何度かこのブログでも書いていますが似たような傾向がシンデレラでもあって、シンデレラが変身するところにもカタルシスは感じていたようなんですが、一番好きだったのはかぼちゃをくり抜いて馬車を作るシーンでした。そう考えると作ったりなんだりということが子供の頃から好きだったんだなー。
 ゲームも我が家に来たのは私が小学生の頃なので本を読んでもらってそのうちに自分でも読んで、みたいな時期が今の子より長かったと思う。

 閑話休題。
 個人が作った話は民話ではない、と京極夏彦さんが定義していらしたんで民話ではないのですが、少年ジャンプで連載されていた漫画の銀魂ってかなり民話的要素がふんだんに取り入れられていたのでは? とこの本を読んでいて思ってしまいました。
 英雄譚、艶笑譚、愚人譚、強烈なシモネタに加えて近代的要素など子供だって好きだし大人も笑っちゃうし日本の古来から語り継がれてきた要素があるんではそりゃ人気になるよな、と全く関係のないところで納得していたりしました。アラレちゃんとかもそうなのかな。
 本書で落語的と語られていた涼み袋も面白かったですし、読んでいるあいだにゴールデンカムイのアニメでパナンペとペナンペが出てきたので「あーこれ読んでるやつ!!」って勝手に共時性を感じたりしていました。

 日本のえぐめの話も好きなので艶笑譚も語ってほしい(小声)。
 それを言ったら桃太郎は一種の艶笑譚のたぐいではあるのかな。最初だけ。
 グリム童話も各地に伝わる民話をグリム兄弟が集めて編纂したものだし、シャルル・ペローの寓話も民話に着想を得たと書いていた気がするので、童話や寓話の元となっている民が語った話というのは世界各国その家々で受けた話を盛りに盛ったやつ、なのかも。

 また、テレビなどのメディアでは柳田國男は元はロマン派であるというところに触れられないことが多く、そこもきれいに拾われていて嬉しかった。
 私のようなちょびっとしか民俗学の本を読んでいない人間からしても柳田國男はロマンの人なのだろうなという認識なので、下世話とも言える日本各地の民話を集めたり柳田國男の著書を読んでいる人にとってはズレはより大きく感じるだろうな、という気はした。
 艶笑譚はほぼなかったけど子供が思わずもっと聞きたい、とせがみたくなるような強烈なシモ話は多かったですし、残酷なだけの話もあってぞっともしましたが大変楽しめました。
 今回はシモメインでしたが妖怪が出てきたり伝説が出てくるとまた違った趣になるのだろうなと思うとそれも読んでみたくなる。
 本書でおすすめされていた松谷みよ子さんの民話の本は我が家にもあった気がするので(怖くてあまり読めなかった)探してみようと思います。
 注意書きもされていたように下世話な話が苦手なかたには全くおすすめできないけれど、近代以前の歴史とまではいかない日本の話が読みたいかたには面白かったと言いたい。
 柳田國男と折口信夫と赤松啓介などの入り口とか中心というか一番マイルドな部分かなと思いました。もっとロマン的になると柳田國男、伝説的になると折口信夫、下世話になると赤松啓介かな、と思った次第です。かなり偏った個人的見解ですが。
 私個人としては続刊も出てほしいです。