aoi iro no tori

だんだん離れてゆくよ アルペジオのように トリルでさようなら 別れを惜しむように ──日常のおはなし──

2022年3月に読んだ本


 あまり本が読めなかった月でした。

*3月に読んだ本


博物館ななめ歩き
/久世番子・栗原祐司

 文化庁広報誌サイト「ぶんかる」にて連載されている栗原祐司さん解説・久世番子先生漫画による月1連載の1ページ漫画をまとめた本。
 町中にぽつんとある小さめ博物館がたくさん登場します。連載当時私が行きたいと思っていた博物館は載っていませんでした。もしかすると記憶違いだったかも(※)。
 読んでいて行きたいなーと思ったのはニコンミュージアムでした(ほかにもあったけど失念してしまいました)。ニコンミュージアムショップの商品は一部を除いて通販ありと公式サイトに書いてあり「ほほう」と思ってみたら目当ての「一口ようかん」はミュージアムショップ限定でした。だよね。
 古墳を全く知らない人生なんですけど、「博物館ななめ歩き」を読んで古墳にも興味が湧きました。年寄りに寄っている私には小さい文字が多いのが難ですが密度たっぷりで読み応えがありました。

※)行きたいと思ったのはサイト版「博物館ななめ歩き」のサイト順ではNO.032の松岡美術館でした。猫の給仕頭というジャコメッティの作品を所蔵している美術館です。



高橋留美子傑作短篇集・専務の犬
/高橋留美子

 表題作にもなっている「専務の犬」がダブルミーニングになっていることに気がつく瞬間が心地よいです。迷走家族F(ファイアー)の子供が思い込みで親を信じられなくなる瞬間も「あー、自分にもそんな頃があったなあ!」となりましたし、茶の間のラブソングがかなりほろっと来ました。省いてしまったけれどどれも面白くて前回も書きましたが「このページ数に物凄いボリュームの物語!」としか言い様がないです。「赤い花束」を読むのも楽しみです。



踊る教室
/田村由美

「タムのなんでもカプセル」シリーズとは別枠の「たむたむVARIETY THEATER」という短編集シリーズの1冊目。
 恋愛を絡めないと、という雰囲気で足されている恋愛要素があまり好きではないかなあと思ってしまいました。主人公が一人でも生きていけるよねと好きな人に言われて「そんなわけないけど弱いところを見せたくないから仕方ない」は分かるような。いや私は弱みを人に見せまくりなんですが。でも「君は一人でも生きていけるよね」と言われたら怒る謎の自信はある。
 併録の「ぼくらの村には湖があった」は日常的冒険譚というか大人になる過程をていねいに切り取った作品でした。



王子くん
/田村由美

「たむたむVARIETY THEATER」2冊目。こちらのほうが好みの作品が多く、田村由美先生の今の作品につながる作品も多かったのではないかと思います。
 表題作の王子くんもミステリと言う勿れに通じるようなシーンがあったり、同時収録の「霧の家─公開されない3本の棘─」と「不幸作家と呼ばれたい」も良かったです(「晴れ、時々闇」も)。
 霧の家─公開されない3本の棘─はたむ先生の真髄極まった感すらありました。
 不幸作家と呼ばれたいは作家じゃないけど分かる気がします。「自分がこんなにひどい目にあっているのに」はなにかと色々な原動力になりがちですが、主人公みたいに幸せで満たしてみたいものです。



あさって朝子さん
/伊藤理佐

 ドラマ「おいハンサム!!」の一部原作となった「あさって朝子さん」。おいハンサム!!の感想も混じってしまうけどドラマで脚色された部分はやはり微妙だったし、伊藤理佐先生の漫画のキャラクターが喋っているシーンのほうが面白くて血が通っていた気がした。一つ「これだけは!」と思ったのは「おいピータン!!」のほうで冷やし中華を付き合っている女の子にとりあえず作ってもらってみる男性の話。
 確かに女を冷やし中華の作り方で量るって意味がわからないしわりとひどいのだけど漫画のなかでは男性のそういう魂胆に気がついているのかいないのかわからないけど作り終えた女性は「どうかした?」という表情で男性がコートを脱ぐのを促す。伊藤理佐先生の女性キャラクターはそういう母性を持っている。
 それがドラマでは「そういうのやめたほうがいいよ」と冷淡に男性に言い放す里香さんの表情と声音が悲しかった。わかっていて知らないふり、だと思ったんだけどなー。ここは解釈違いなので仕方ない。
 思わずドラマの感想を書いてしまったけどあさって朝子さんも原作のほうが得心がいったし、ドラマの由香さんのモデルは朝子さんテイストだったんですね。おいピータン!!の大森さんの元恋人の陽子さんとはテイストが違ったのでけっこう違和感があったのだけどそういうことだったのか。
 というか素直にあさって朝子さん、おいピータン!!、渡る世間はオヤジばかりなど一つ一つのドラマとして観たかった。合作キメラは一人のファンとして非常に悲しいです。
「あさって朝子さん」の感想でもなくてすみません。本作もとても面白かったです。
 岩田さんという苗字が思い出せなくて記憶の糸を辿る話が好きです。



ビショップの輪(1巻)
/田村由美

 全2巻なんですよね。1巻があまり売れなかったのでしょうか。 今読んでも面白い滑り出しなんですけど。
 あえてこのあとの田村由美先生の作品の派生につなげると7SEEDSのルーツ的といったように感じる作品ですね。モチーフそのものというよりは全体の雰囲気ですが。
 2巻は今月読みます。



美人画報
/安野モヨコ

 文章が若いですね。ギャルを自称していらっしゃるし。美容の話がメインですが今思うと「そんなに効果なくない?」みたいなものも多かったりして、単に読み物として読むのが楽しいです。文庫版ながらカラーで絵が載っているのでお得感があります。
 けれども文章が(わざとにしても)若くて眩しいです。



美人画報ハイパー
/安野モヨコ

 ハワイに行く描写があったのはハイパーだったかな? だとすると監督と付き合っていた頃に行ったハワイというのはこの頃なのだろうか。
 文庫版あとがきでモヨコ先生が「この頃は付き合ったり別れたりを繰り返していた」と書いていたので別の方かもしれない。年号的には監督かなあという気も。
 内容では腸内洗浄が流行った頃ですね。モヨコ先生が体験する描写があって、やってみたかったし今も少しやってみたいけど体にはあまり良くないと聞き及んでいるのでやめたほうがいいんだろうな。
 文章は若い部分と今に繋がっている部分と二つあります。今につながる文体のほうが読みやすいです。でも当時は不評だったのかそういう文体のほうは少なかった。



美人画報ワンダー
/安野モヨコ

 庵野監督とご結婚されるまでとされてからの話。でも監督不行届みたいな二人メインの内容ではなくて「花嫁はなぜきれいになるのか」「花嫁が痩せる謎」みたいなものに焦点を寄せていたりモヨコ先生自身の視点が多いです。
 現在「ふしん道楽」という連載をしていらっしゃいますが、美人画報ワンダーでもリフォームの話が出てきます。センスが若いです。今の内装の話を読んでいて安心できるからこそ読んでいて「こういう時代もあったんだ」というド派手さでした。派手ながらバランス感覚と統一感はさすがです。
 自宅描写で監督不行届にも登場した「木の形のシャンデリア」も写真で出てきました。きれいですが確かに構造がよく分からない。
 美人画報ワンダーを最後に「オチビサン」以外の連載を休止したそうですが「美人画報」の連載がとどめだったのでは……と思うくらい当時バッシングされていたんですね(容姿などのことで)。
 私は美人ではないです、と苦笑風に描かれていたけど相当つらいものがあったのではと推察いたします。自分が美人でありたいけど美人ではないという自覚があったら(私はモヨコ先生に対して不美人だとは思わないですが)精神的にはキツイものがあります。
 今のモヨコ先生の「ともしび日記」が、忙しそうだけれど監督とサリーちゃんと楽しく過ごしているようで良かったと思うばかりです。



邦画プレゼン女子高生 邦キチ!映子さん(1巻)
/服部昇大

 ななめ読みしていてじっくり腰を据えて読んでいなかった作品ですが読み込もう、と意気込んで読んでみました。
 邦画あるあるが詰め込まれていて邦画業界自体に「邦キチがネタにしてくれるだろう」みたいな風潮ができてしまったのがすごい。いや良くはないのだろうけど。
 当初から観てみたいと思っているのが電人ザボーガー。
 実写版魔女の宅急便で「トンボを煽るキキ」も妙に気になる。
 日本でも大変話題になったバーフバリは未見ですがボリウッドは大好きなので観てみたい。
 邦キチ!映子さんを読むと定期的にアマゾンプライムに入りたくなります。


 3月に読んだ本は再読本とカウントのみを含めて11冊でした。
 少ないですね。量が多ければいいというものでもないのでこれくらいで良いのかな。
 できたら今月はもう少し読書量を増やします。
 小野不由美先生の「営繕かるかや怪異譚」も読んでいるのですが、移動中にしか読まないのでなかなか進みません。一作目で既に面白いので二作目の文庫化が待たれます。
 4月に読めたらいいなあという作品はアガサ・クリスティの「秘密機関」です。けっこう分厚くて字も小さめな気がしたので読めるか心配。
 それとアンソニー・ホロヴィッツ作の「メインテーマは殺人」。この前本屋さんに行ったら次作出ていましたわ……。
 漫画では「悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民のために尽くします」です。タイトルが長い。ちらっと読んで漫画版が面白かったので原作も読みたいと思っています。確かかなり長いんですよね。長く楽しめるということで、勝手に期待しております。

 ではまた来月にお会いしましょう。