aoi iro no tori

だんだん離れてゆくよ アルペジオのように トリルでさようなら 別れを惜しむように ──日常のおはなし──

物言わぬ人


 夢枕に立つ人は亡くなってからある程度時間が経たないと喋ることができないんだよ、と教えてくれたのは他ならぬ生きていた頃の父でした。なので本物? だったのかも。

*ラーメン大好き
 私があまりにも死にたがっているからか、父が夢枕に立ちました。
「俺だって食べたいんだぞう」
 と言わんばかりに生前大好きだったラーメンと、喫茶店で食べるような軽食(玉子サンドみたいな)を食べたいようなアピールをしていました。喋らないからニュアンスでしか分からなかったけどその二つはとても食べたいのだとわかった。
 それから、生きていた頃はうちのわんこと衝突ばかりしていたけど夢枕に立った父はわんこと仲良くじゃれ合っていました。もう少し見ていたいな、この幸せな空間にいたいな、と思っていたら夢から覚めて、わっと涙が出てきました。
 父が生きていたらどんなに幸せだっただろう、案外幸せであることに気が付かないんだろうな、等々思ったけれど父ががっつり出てくる夢というのはかなり珍しくて、ただひたすら涙が止まらない。
 あの空間が実際にあった空間なのだと思うと、昔はなんでもなかった光景なのに今はその光景を絵に描くより難しい。
 段々現実感が増してきて、あれは夢だったのだという実感が強くなるのがとても悲しい。
 この涙は喜びだったのか悲しみだったのか。