aoi iro no tori

だんだん離れてゆくよ アルペジオのように トリルでさようなら 別れを惜しむように ──日常のおはなし──

家族三選


 父は特別出演枠です。 *キミは俳優になれるよ  前回の記事でわんこのおむつのことを書いたけれどチン的なものは収納されているものの何故だか横から漏れる。赤ちゃん用のおむつでも横からチン的なものがそれてもらしてしまった。  どうしようかと母と頭を抱えていたら姉が仕事から帰宅してタブレットで「犬 おむつ」と打ち、zと打った瞬間に「犬 おむつ ズレる」という候補が真っ先に上がる、とちょっと盛り上がったので私もタブレットで「犬 おむつ」と打ったところでzを打つと本当に「犬 おむつ ズレる」が一番上の候補にせり出てきた。それくらい犬のおむつというのはズレやすく、個体差があるのだろう。  そのなかで犬用のおむつカバーというものもあるらしい。値段はピンキリで、主に中国産らしい。もう国産とか中国産などにはこだわってはいないから中国産であってもなんであってもズレなければいいのだけども、ズレるズレないは犬の大きさとおむつカバーそのものの個体差が大きいらしく、ある意味では博打要素も大きい。しかしながら迷っていられるほどおしっこ撒き散らし問題も余裕がなく、明日明後日あたりには決めておきたいところ。  当のわんこの足腰は踏ん張ることができたりできなかったり、気分で決めている部分がなきにしもあらずな雰囲気をまとっており、つまりは散歩に行く前、家から出されるのを想定する時は渋々、足をひきずって「歩けないんだよ……老体に鞭を打つなよ……」といった風体で歩くので仕方なく抱っこさせて連行するけど家に入るときは歩けない設定を忘れ、サッササッサと足取りも軽く廊下を歩き、さながらネイマール劇場を見ているかのような気分に陥る。 *納涼大会風父の思い出話(そんなに怖くないけど怖い話が苦手な方はご注意)  父は三十路のときに「このままではいかん」と一念発起し、父親母親(私にとっては祖父母)と、兄夫婦(同、伯父伯母)、姪(同、従姉妹)の暮らす一家を飛び出して一人暮らしを始めたらしい。  大所帯で、仕事から家に帰ったら「母ちゃん、今日の晩飯、サンヨンサンね!」(サンヨンサン、ようするに343で刺身を指すダジャレ。父のもっとも好きな食べ物はたぶんマグロのお刺身だった)と言えばお刺身とお酒が出てきて、晩酌に舌鼓を打つ。そういう生活をしていてはダメだ、と思ったと後年滔々と語った。  仕事仲間の方にも手伝ってもらって初夏だったか夏だったかの暑い日に引っ越しを終えて四畳半(だったと思う)の部屋で一人暮らしデビューした父はもうその日に寂しくて寂しくてたまらなくて自分以外の動くものが欲しい、と思い立ちラジオと首振り機能のついた扇風機を買ったんだよと、折りに触れてよく語っていました。  その父とずっとお供だった扇風機が私が20歳くらいの頃に壊れ、その時点で30年近く保っていたと思うので相当物持ちが良いのだけど、ラジオは私が30歳くらいまで現役だったけどウンともスンとも言わなくなり、父が他界して一年後に一番の長生きの冷蔵庫が単なる物置に転向した。冷蔵庫としての機能は45年くらい保ったのではないかと思う。  いや、話がそれた。冷蔵庫の話は今はいい。とにかく首振り機能のある扇風機。  父が結婚後に買ってうちに来たもので、埼玉に住んでいた時代から現存しているので私と同期くらいか、もしかすると先輩なのではないかと思うのだけど、寝室の椅子の上に置いているその扇風機が、電源の消し忘れで暗闇のなかでブーンブーンと首を振っていてそのあまりの人間的な動きにギョっとして、思うより早く父の扇風機を買った話が頭を過ぎった。  それに関しては完全に私の消し忘れなんだけど、母が回転行灯をつけようとしたら点かなかったのに私がつけたら普通に点いたとか、三回忌に向けてご本人がちょっと張り切りすぎているのでもう少し落ち着いて、と言いたい。家族の誰も父のことを忘れていないしお父さんの話題が出ない日なんてないんだからね。 *いつまでもやせ細ったスネをカジっていて申し訳ございません  昔の母は食にうるさかった。天ぷらは自分で揚げたものしか食卓に出さなかったし、カップラーメンというのは体に悪いからと言い、我が家では滅多に食べられなかった。たまに日曜日のお昼に食べるカップヌードルにはせめてもの栄養素とばかりにお湯を入れたあと大量のキャベツを詰めて、湯気で蒸されたキャベツから食べるのが我が家のカップラーメンの原風景となっている。  今は母も重要な働き手で一家を養うのに大変で、天ぷらはたまにならズルをして出来合いのものを買って良いとなったし、父の愛した袋麺や乾麺はもはや親友というかマブダチの域だ。それでも母はカップ入りのカップラーメンだけはケミカル感が強いみたいで好きではないようだけれど。  メシマズというわけではないけれど、大体の味は醤油とお味噌でつければ良いという考えのもとで育ったゆえ、海外料理や無国籍料理になかなか手が伸びないところは一家一丸となっている。  姉と私はエスニック料理もけっこう好きだけど父母世代だと少し抵抗があるみたい。 追記.誤字脱字をサイレント修正(?)