aoi iro no tori

だんだん離れてゆくよ アルペジオのように トリルでさようなら 別れを惜しむように ──日常のおはなし──

植芝理一という魔力


 ほかの人が感じない魅力を誰かが掬い上げることってありますよね。私が魅力を感じなくてもほかの人が共感・共鳴したり、また逆もあると思います。インプットする側としては好きな作品には常に正直でいたいです。好きな作品というのは道を違えてもやっぱり好きの方向へ戻ってしまうものだと思うから。 *好きというだけでは表せない  子どもの頃に好きだった漫画家さんで今でも絶対に抗いがたい魔力のようなものを持っている漫画家さんがいます。刷り込みも大いにあると思いますが、そのうちの一人であるところの植芝理一先生は本当に抗えないのです。  というのもちょっとおかしな話で、必ず一度ないし二度以上は抗っているのです。  ディスコミでいえば小・中学生のとき、コミックスを探して見つけて、なんとなく「まだ早いかもしれない」と思って棚に戻して、17、18歳の頃に街中を駆けずり回って探して手に入れました。  ディスコミという漫画の存在を知った最初のきっかけは「佐竹雅昭の覇王塾」というラジオで放送されていたラジオドラマ。MCは佐竹雅昭さんと林原めぐみさんという異色の組み合わせ。覇王というのは当時発売されていたゲーム雑誌でした。  そのラジオドラマでディスコミというものに強烈に惹かれたものの、学園編のコミックスの表紙を見てなんとなく「自分にはまだ早い」というのが理解できて当時は買いませんでした。  しかし17歳の頃、無限の住人という漫画に嵌ります。コミックスを追うだけなのがもどかしくてアフタヌーンを購読するようになりました。雑誌あるあるですが本命の作品や特集を読み終えると暇なときに別の特集や漫画を読みますよね。それが当時連載されていた(というか終盤の)ディスコミ精霊編でした。  読んでいて強烈に惹きつけられて、「私この漫画知ってる! ていうか前に一度『お断り』したやつ!」と思い出して運命めいたものを感じ、そこからは前述の通り街中を駆けずり回って探して入手したのですが、夢使いでもそれに似たようなことが起こりました。  一巻を読んで、二巻も購入したと思います。でも「なんかよくわからないけどイヤ」と思って、でも手放しはせずに続刊も買いませんでした。その後、夢使いが終わり、謎の彼女Xが始まってそれは集め始めました。  けれどもアニメになったときに「こんな変態漫画を読んでいたんだ私」と思っていやになって捨てました(植芝先生と愛読者様には申し訳ありません)。  また時が経ち、無性に夢使いが読みたくなって全巻購入して読んだらやっぱり面白くて昔ひっかかりを感じたところがまるでひっかからないんですね。  そしてまた時が経ち、大蜘蛛ちゃんフラッシュバックの試し読みを読んで、大蜘蛛ちゃんフラッシュバックも面白いと思いましたがずっと封印してきた謎の彼女Xに挑戦したいという気になっていて入手しました。  じっくり読んでいます。謎の彼女Xはキーポイントの唾液というのがどうしても正直ちょっと苦手だなーと思います。そこが植芝流というところでもあるので全巻読了後に印象が変わっていますように。  それから書いていて思ったけど年々「昔気になったところがひっかからなくなってきた」のは私の性癖が年々拡張してきているのと、加齢とともに細かいことが気にならなくなっているだけな気もする。  ただ、何年も経て結局植芝作品を全て購入しているのでやはり抗えない魔力を感じているのだとは思う。